WEBマガジン 企業変革への道

企業変革力を上げる変革リーダーの育て方

ものづくり白書2020でのメインメッセージは「企業変革力(ダイナミック・ケイパビリティ)を高める必要がある」でした。企業変革力の概要はこちらの記事をご覧ください。

この記事にも少し書いていますが、企業変革力の前提は徹底した改善だと考えます。イノベーションとデジタルトランスフォーメーションが注目されがちですが、前提を疎かにしてはいけません。今回は変革・改善するための変革リーダーの育て方を考えてみます。

なお、今回は中堅クラスの企業向けに書いています。中小企業については最後のまとめで触れているので、最後まで読んでいただけるとありがたいです。

変革リーダーを育てるポイントは?

では、どういった点がリーダーを育成するポイントとなるか、考えてみましょう。

①適切な人を選ぶ

変革リーダーに選ぶのはどんな人がいいのでしょう。色んなタイプがあるので正解はないですが、色々とヒントになることを書いてみます。

<変革リーダーに適している人のタイプ>
・変化を好む/抵抗がない
・目的志向で行動する
・言うべきことは言う

こういう人は大きな組織では浮いていることが多いです。会社に諦めかけているケースもあるので、うまくモチベーションを上げて巻き込みたいです。

もし活躍していて「現場から外せない」という声が大きければ、その時こそ外すべきです。会社の本気度が伝わりますし、一人抜いたぐらいで現場は止まらないものです。それで止まるぐらいならビジネスとして成り立っていない現場なので気にしなくていいと思います。

②成功体験を積むチャンスを与える

変革リーダー候補を見つけたら、成長する場を与えましょう。例えば、新規事業の責任者、変革部門のリーダー、停滞事業のリーダーなど色々考えられますが、一番やりやすいのが「変革プロジェクトのリーダー」です。組織を大きく変えなくても良く、比較的準備や根回しが少なく、そして社運を賭けたテーマを任せられるからです。

③適切な支援をする

最初から上手く行くはずがありません。「めっちゃ頑張ったらギリギリ乗り越えられるハードルを乗り越える」という経験を積むと人は成長しますし、成功すると次に繋がります。

例えば、以下のようなことを支援します。

<支援例>
・適切な課題を選定する
・適切な教育で課題を解決する武器を与える
・メンバーなど周囲へ教育をする
・スポンサーと支援体制を明確にする

サラッと箇条書きで書いていますが、ものすごく考えて設計する必要があります。なぜなら変革リーダー育成以上に、社運を賭けた課題を解決する必要があり、最終的にはかなりの現場の人たちまで巻き込むことになるからです。全部重要ですが、これらを満たした方法論がリーン/シックスシグマです。

日本人だけが知らない、リーン/シックスシグマ

今さら聞けないDMAIC。ISOにも組み込まれています

④継続してチャンスを与える

1回成功体験を積んで終わっていたらリセットになります。1回の失敗で終わっていたらほぼ次につながりません。変革プロジェクト終了後、もう一度プロジェクトを実施することもありますし、責任ある立場に昇格したり異動することもあります。会社と変革リーダーのためになるよう、会社の課題と役割を託すことまでしっかりと考えましょう。

変革リーダーが育った実例

①背景

その会社では大きな事業変革が求められていました。中期経営計画ではコストダウンは当然のこと、様々なオペレーション変革と並行して収益モデルの改革といくつかの新規事業の立ち上げを一気に進めなければ、勝ち残ることが難しい状態でした。

②変革リーダーの選定

まず5人の変革リーダーを選びました。一人は変革の必要性を経営層に説いて私たちに声をかけてくれた課長です。ものすごい行動力がある人でしたが、敵も多く難しい立場にいました。その人と相談して現場から4人を選抜して「アスプロ(明日に向かうプロジェクト)」というプロジェクトを立ち上げました。

③変革の実行とリーダーの成長

そこからが大変です。様々な調査をして問題点をあからさまにして変革の方向性を経営層へ報告したり、さらに現場からエース級を集めてワークショップをして変革の具体策を決め、13箇所の拠点に具体策を説明するために行脚しました。

ここまででものすごい成長が見られました。経営層へのプレゼンを、徹底した準備をしてやり切ったとき、視座がかなり高くなりました。各地の現場の声を聞き、心情を理解しつつも変革を進めるよう言い切った彼らは、一本筋が通った言動をするようになりました。こういった小さな成功体験も重要です。

④変革リーダーへの支援

上記のような状況を乗り切る支援として以下のことをしました。

・適切なタイミングで変革の方法論の研修を実施
・担当役員を決め、役員に最終責任を持たせる
・コンサルタントがメンターにつく
・キーパーソンには全員に説明会や研修を実施
・アスプロメンバーや現場行脚の飲み会は経費でOK

他にも細かな支援をしました。支援内容は企業の風土や状況によっても変わりますが、支援する側は変革リーダーは孤独でプレッシャーが大きく、最重要人財なので、甘やかすのはダメですが必要なフォローを考えて実施することが大切です。

育てるのは変革リーダーだけでいいの?

結論を書くと、ダメです!

最重要はリーダーですが、いきなり数ヶ月でリーダーに育つなんて普通はありません。意図的に育てるということは「育つ環境を用意し、成長する可能性を広げて高める」ということです。例えば、リーダーと共に成し遂げるフォロワーはものすごく重要ですし、メンバーも重要です。ただ、これまた全員を一気に育てるのは難しいから、人財育成の戦略を立てることが必要となってくるのです。

人財育成の戦略を考えるにあたり、リーダーが力を発揮できる環境は重要です。例えば、外部からリーダー人財を採用してもうまくいかないケースは数多あります。それは企業によって求めるリーダー像と、ビジネスや実務の環境が違うから当然です。まったく変革したことがないような官僚組織に一般企業の優秀なリーダーを送り込んでも変えることはできませんし、自信を失ったり病んでしまってリーダーとしての力が下がってしまう可能性の方が高いです。

意図的に育てるには、リーダー個人だけでなく、それ以上にその環境に着目することがとても重要です。

まとめ

企業変革力の低い企業が変革するには、ものすごいパワーが必要です。その中心となるのが変革リーダーで、あの手この手を使ってリーダー中心に成功に導くことが重要です。

中小企業の場合、一番ネックになるのは人財ですよね。選ぶほどいないですから。しかし巻き込む人数が少なく、事業もシンプルな分、変革のハードルは低いです。労力は決して低くないですが、ある程度力技でも進められます。なので初期は「社長自ら変革する」ことが王道のやり方です。その活動を通じて若手の登用など、リーダー人財の確保を考えます。誰が中心になるとしても、やり方が違っても、ポイントはここまでに書いたことと何ら変わりはありません。

 

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