今さら聞けないDMAIC。ISOにも組み込まれています
別の記事で書いているように、リーン/シックスシグマは海外では「今さら聞けない」レベルになっています。
当然、その中核となる方法論「DMAIC」も今さら聞けないレベルです。DMAICは課題解決や改善の世界標準の「共通言語」です。「共通言語って?」と疑問に思われる方、課題解決の基礎を知りたいと思われる方にDMAICを解説します。
こういった方法論を使った改善活動を続けると、ものづくり白書にも書かれている「ダイナミック・ケイパビリティ」や「デジタルトランスフォーメーション」につながります。海外では、ERPやRPAはDMAICでプロセス改善することが前提です。特にDMAICを使うことを考えていない方も知っていただいた方がいいと思います。
DMAICってなに?
DMAICとは、Define(定義)、Measure(測定)、Analyze(分析)、Improve(改善)、Control(管理)の頭文字で改善のステップを表します。
ちゃんと課題を定義し、悪さ加減の実態を測定(把握)し、原因を分析してから改善策を決め、その改善を管理して定着化をする、というある意味当たり前のステップです。言い方を変えると、感覚で対策ありきで改善するのではなく、ちゃんと改善の目的背景を捉えて現状や原因の分析をした上で改善しましょう、と規定しているのです。
メリットを個人の側面と組織の側面で考えてみます。
DMAICを自身が使うメリット
単に行き当たりばったりにならないだけではありません。DMAICを基準に考えたり、改善活動のノウハウを整理できるので、ものすごく自分の中で改善の進め方が整理できます。私は1,000近い課題を見ていますが、軸としてDMAICがあるので、何か課題が出てきたときにDMAICで整理したノウハウが引き出せ、すぐ解決までの進め方が出てきます。物事は準備9割と言われますが、改善も準備9割です。進め方は準備のベースとなります。
DMAICを組織で使うメリット
組織でDMAICを使うとさらにパワフルです。小集団活動を見るとよくある状況が「人によって進め方が違う」「リーダー一人の活動になる」「進捗がマネジメントしづらい」などです。これらが激減します。
組織でDMAICが使えていると「よし、Mはこれでいいから次はAだ」といったことがわざわざ説明なしでみんなが理解します。またみんな進め方の標準形やよく使うツールを知っているので能動的に動きやすいです。また、改善活動は正解がないので進捗管理がしづらいですが、標準的な進め方があると比較的管理しやすくなります。さらには個人でもそうですが組織でノウハウが蓄積しやすくなります。
シックスシグマは共通言語
シックスシグマは「共通言語」と言われることがありますが、上記の組織でDMAICを使えている状態が共通言語と言われるゆえんです。しかもお客様やサプライヤーとも同じ言語が使えます。海外でも同じ言語です。私は英語は話せませんが、シックスシグマ用語は知っているので、英語のシックスシグマ資料はだいたいわかります。国ではなく活動で考えた時の言語なのです。
例えば、サムスンのような他国のシックスシグマを導入している企業とみなさんの会社が取引するとします。「品質管理はどうやっている?」と聞かれたとき、ISO9000を答えるより「シックスシグマやってて、このツールで管理してます」と言った方が内容が明確に相手に伝わり、信用を得るのが早くなります。
DMAICのステップの内容
具体的に各ステップを見てみます。詳しく書くと本1冊でも済まない話なのですが、まずは概要を知ってください。
Defineフェーズ(Dフェーズ)
課題を定義するフェーズで、改善プロジェクトの内容を明確にします。
内容とはつまり、課題の背景、目的、目標、スコープ、チームメンバー、改善指標といった5W2Hで、これらを明確にします。また進め方を設計して実行計画を作成します。3つの成果物「プロジェクトチャーター(課題定義書)」「プロジェクトロジック(プロジェクトの論理的な進め方)」「スケジュール」を作成し、関係者で合意ができればキックオフです。
Measureフェーズ(Mフェーズ)
現状の悪さ加減を測定するフェーズで、データと事実で実態を明らかにします。
具体的には、プロセス(業務の流れ)を図式化し、どこのプロセスに問題が起きているかデータを分析して見つけます。「プロセスマップ(業務の流れを図にしたもの)」「ヒストグラム(度数分布表)」は最重要ツールです。この重要度合の解説はいずれ書きたいと思います。どこのプロセスでどれだけ悪さが発生しているか掴めたらOKです。
Analyzeフェーズ(Aフェーズ)
原因を分析するフェーズで、ここでもデータと事実を使い、仮説検証を繰り返して根本原因をつきとめます。
具体的には、仮説を洗い出し、重要仮設からデータと事実で検証し、さらに詳細な仮説を立てて検証する、ということを繰り返します。最重要ツールはMフェーズの2つに加えて「ロジックツリー」と「パレート図」です。問題発生のメカニズムが明らかになり、この原因をつぶせば改善する、ということが明確になればOKです。
Improveフェーズ(Iフェーズ)
改善策を立案するフェーズで、原因をつぶした改善後のプロセスを設計し、リスク検証や、改善策に投資が必要なら投資の意思決定をします。
具体的には、改善案を洗い出してそれらからありたい改善後のプロセスを作ります。リスク分析やトライアル実施をして改善後のプロセスの検証を行います。ここでは「プロセスマップ」「リスク分析」「トライアル」といったツールや考え方が重要となります。改善策が確定したらいよいよ実行に移ります。
Controlフェーズ(Cフェーズ)
改善策を実行して定着させるフェーズで、改善策の実行準備・実行・実行管理・継続管理の仕組みづくりを行います。
要は、改善策を実施して新たな問題が出たり、前のやり方の方が慣れてるからと元に戻ったりしないよう、しっかり効果が出て業務が定着するためのことを行います。ここでは「作業手順書」「作業教育」「KPI設定と管理の仕組み」が重要な考え方とツールです。日常業務化できれば活動終了となります。
まとめ
DMAICをご紹介したのは、「グローバルスタンダードな方法論を知っていただく」ことと「方法論を知って効率的効果的にプロセス改善を繰り返し、シンプルなプロセスにすることがデジタルトランスフォーメーションに重要」だからです。
小さな規模の会社では改善活動が活発に行われていないケースが多く見られます。実施していても無手勝流。改善も技術やノウハウがあり、伝承対象と私は考えます。さらには、会社として繰り返して実施し続け、文化とすることが重要です。小さな規模の会社でも、規模なりのやり方があります。短期的に効果を出しながら、中長期的には組織力向上とデジタルトランスフォーメーションを見越して、自社の改善活動を見直してはいかがでしょうか。
参考:QCとシックスシグマの違い
ものすごく頻繁に「QCとシックスシグマの違いは何ですか?」と聞かれます。シックスシグマの元がTQCなので、見た目の大きな違いはないです。しかし一般的な解釈では本質的に違う部分がありますので解説します。
QCとは
QCとはQuality Control(品質管理)の略で、現場主体で小さなグループが、品質管理のツール(QC7つ道具など)を使って科学的にプロセス改善し、PDCA(Plan:計画を立てる、Do:実行する、Check:評価する、Action:改善する)という管理サイクルを回す活動を指します。
TQM・品質管理(日科技連)
活動の進め方はQCストーリーで定義されており、「問題解決型」「課題達成型」「施策実行型」の3つのタイプのQCストーリーがあります。一番一般的な問題解決型QCストーリーには8つのステップがあります。
QCとシックスシグマの違い
簡単に言うと、トップダウンでシステマティックに経営に結びついているのがシックスシグマ、ボトムアップである程度の自由度があり問題解決に特化しているのがQCです。冒頭から書いている世界標準なのもシックスシグマです。
元であるTQCをアメリカでシステマティックに改良して経営手法として使われていたので当たり前ですよね。QCでも日本企業で経営手法として使っているところは差がないです。それぞれ道具なので、どう使うかだと思います。